子どものスマートフォンの利用明細やクレジットカードの請求を見て、占いアプリや鑑定サービスへの高額な課金に気づいた――という相談が寄せられています。未成年者による契約には、民法上の取消権が認められる場合があります。この記事では、未成年者取消権の基本的な考え方と、取消しが制限され得る例外、保護者が確認・記録すべきことを整理します。
未成年者取消権とは
民法では、未成年者(契約時点で18歳未満)が法定代理人(親権者など)の同意を得ずに行った契約は、原則として取り消すことができるとされています。占いアプリの課金やオンライン鑑定の申込みも「契約」であるため、この考え方が適用され得ます。取消しが認められた場合、支払った代金の返還を請求できる可能性があります。ただし、取消しの主張が認められるかどうかは個別の事情によって異なるため、実際に返金されるかどうかを断定することはできません。
取消しが認められにくい例外的なケース
1. 小遣いの範囲内で処分を許された財産による契約
法定代理人が目的を定めずに処分を許した財産(いわゆるお小遣い)の範囲内での契約は、未成年者が単独で行っても取消しの対象にならないとされています。課金額が日常的な小遣いの水準を大きく超えている場合は、この例外に該当しない可能性があります。
2. 年齢や同意について「詐術」を用いた場合
未成年者が「自分は成年である」と偽ったり、保護者の同意があるように装って事業者を信じさせた場合、民法上の「詐術」にあたるとして取消しが制限されることがあります。単に年齢確認欄に生年月日を偽って入力しただけで直ちに詐術と評価されるかどうかは事案によって判断が分かれるとされ、決済手段の入力状況やアプリ側の年齢確認の仕組みも考慮要素になり得ます。
取消しの期限と、取り消した後のお金の扱い
この節は2026年10月24日に一次資料を基に追加した一般情報です。ページ上部の監修表示は、この節の専門家による確認を示すものではありません。
未成年者取消しには、民法で次のような決まりがあります。
| 決まり | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 成年の年齢 | 18歳で成年。契約した日に18歳未満だったかで判断します | 第4条 |
| 取り消せる人 | 未成年者本人のほか、その法定代理人(親権者など) | 第120条 |
| 取り消した後 | 契約は初めから無効だったものとみなされ、事業者は受け取った代金を返す義務を負います | 第121条・第121条の2 |
| 子どもが返すもの | 契約の時に未成年だった側は、その契約で「現に利益を受けている限度」で返せばよいとされています | 第121条の2第3項 |
| 取消しの期限 | 追認できる時から5年間、または契約の時から20年が過ぎると、取消権は時効で消えます | 第126条 |
| 取り消せない場合 | 小遣いなど処分を許された財産の範囲(第5条第3項)、成年と信じさせる詐術(第21条)、営業を許された未成年者のその営業に関する契約(第6条) | 第5条・第6条・第21条 |
保護者が課金を知った後に「そのまま使ってよい」と認めたり、残りの代金を支払い続けたりすると、追認したと受け取られるおそれがあります。取り消すかどうかを決めるまでは、追加の支払いを止めておくのが安全です。
出典: 民法(e-Gov法令検索)第4条・第5条・第6条・第21条・第120条・第121条・第121条の2・第126条(2026年10月24日確認)
保護者が確認・記録すべきこと
- 課金の日時・金額・決済手段(クレジットカード、キャリア決済、プリペイド等)の履歴
- 利用したアプリ・サービスの名称、申込み画面や年齢確認画面のスクリーンショット
- 子どもが契約時にどのような年齢入力・同意操作をしたかの聞き取りメモ
- これまでの課金の合計額と、家庭内での小遣いの取り決め内容
スマートフォンの高額課金トラブル全般の記録の残し方は占いアプリの高額課金を解約・返金請求する方法もあわせて参考にしてください。勧誘の手口自体に問題があった場合は霊感商法の典型的な手口と契約取消し・返金の対処法で解説している内容も判断材料になります。
相談先と手続きの進め方
未成年者取消権を主張する場合、まずは事業者(アプリ運営会社やプラットフォーム)に対して取消しの意思を伝え、返金を求める連絡をします。決済がクレジットカード経由であれば、あわせてカード会社にも相談してください。カード決済に関する交渉の考え方は占いのクレジットカード決済トラブルとチャージバック対応で解説しています。事業者との交渉がまとまらない場合や連絡が取れない場合は、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談し、状況の整理と交渉方法についての助言を受けることができます。
| 相談先 | できること |
|---|---|
| アプリ・サービスの運営事業者 | 取消し・返金の直接申請、利用停止の依頼 |
| 決済プラットフォーム(ストア等)や通信キャリア | 決済方法に応じた返金申請の窓口案内 |
| クレジットカード会社 | 未払い分の支払停止に関する相談 |
| 消費生活センター(188) | 取消し主張の可否や交渉方法についての助言・あっせん |
事業者に取消しを伝えるときの書き方
この節は2026年10月24日に一次資料を基に追加した一般情報です。ページ上部の監修表示は、この節の専門家による確認を示すものではありません。
取消しの意思は、日付が残る方法(メールや問い合わせフォーム、記録が残る郵便)で、事業者に伝えます。書く内容は次の5つです。
- 契約した人(子ども)の氏名・利用者ID、契約した日の年齢
- 課金した日時・金額・決済手段(明細の画面を添付)
- 法定代理人として同意していないこと
- 民法第5条第2項にもとづき、これらの契約を取り消すこと
- 支払った代金の返還を求めることと、連絡先
送った文面と送信日時は必ず保存します。事業者から「年齢確認で18歳以上を選んでいる」と返されても、それだけで取消しができなくなるとは限りません。返事の内容を持って消費生活センターに相談してください。
出典: 民法(e-Gov法令検索)第5条(2026年10月24日確認)
よくある質問(FAQ)
Q1. 子どもが18歳の誕生日を迎える直前に契約していました。取消しは主張できますか。
A. 契約時点で18歳未満であれば未成年者取消権を検討できる可能性があります。契約日と誕生日の前後関係を正確に確認し、記録として残してください。
Q2. アプリの年齢確認で「18歳以上」を選択してしまっていました。
A. 年齢確認欄の選択のみで直ちに取消しが制限されるとは限りません。事業者側の確認の仕組みや、選択に至った経緯などを含めて総合的に判断されるとされているため、状況を整理して相談窓口に確認してください。
Q3. 保護者の同意があったとみなされてしまうことはありますか。
A. 保護者が事前に同意していた、あるいは事後に追認したと評価される事情がある場合は、取消しの主張が難しくなることがあります。家庭内でのやり取りの経緯も整理しておくとよいでしょう。
Q4. すでに課金から数か月経っていますが、相談しても意味がありますか。
A. 取消権は、追認できる時から5年間、契約の時から20年が過ぎると時効で消えます(民法第126条)。数か月であれば期限内のことが多いので、記録を整理したうえで早めに相談してください。
Q5. 取り消したら、子どもが使ったポイント分も返ってきますか。
A. 取り消された契約は初めから無効だったものとみなされ、事業者は受け取った代金を返す義務を負います。契約の時に未成年だった側は「現に利益を受けている限度」で返せばよいとされています(民法第121条の2第3項)。具体的な返還額は事情によるため、相談窓口で確認してください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事案における契約の取消しや返金を保証するものではありません。具体的な判断や手続きについては、消費者庁、国民生活センター、弁護士等の専門家にご相談ください。